理科教育セミナー実施レポート

大田区「プログラミング教育研修」

  • 2020年10月7日
  • 大田区立大森第一小学校
  • 大田区理科部

2020年10月7日に大田区立大森第一小学校にておこなわれた理科部研修において、理科教育セミナーを実施致しました。当日は理科教育セミナーと共にMESHについての研修が行われました。

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セミナーで使用する授業案を解説したガイド(ティーチャーズガイド)やワークシート等の教材や資料は、本サイトから無償でダウンロードすることができます。

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目的

令和2年度から新学習指導要領が完全実施となり、理科の教科書が改定された。プログラミング教育が必修になり、理科では、第6学年「電気の利用」が、ICTを用いたプログラミング教育の単元として教科書に掲載された。それに伴い、プログラミング教材として大田区では各校にSONYのMESHが配布された。

しかし、MESH本体の使い方や本体以外に何を揃えなければならないのか、プログラミング教育とは何か等、不明な点も多かったため、各校が滞りなく理科におけるプログラミング教育が実施できるように2020年10月7日に研修会を開催した。

 

当日の様子

新型コロナウィルス感染症への対策のため、当日は換気を十分に行うために体育館を用いた。60名までの参加とし、各校からはなるべく代表者のみが参加するように要請した。外部の協力者も三密を避けるためにリモートでの参加となった。

プログラミング教材を使ったワークショップを行なうため、4人1組の15グループを編成した。

 

内容1【プログラミング教育の概要】

文部科学省「教育の情報化に関する手引-追補版-(令和2年6月)」を資料とし、概要を説明した。文部科学省が示す「育成すべき資質・能力」には、各教科等の資質・能力に収まりきらない汎用的な資質・能力があり、その一つに「情報活用能力」(下の資料)がある。

情報活用能力には、情報を結びつけて意味を見いだす力や問題の発見や解決に情報技術を活用する力、情報モラル、情報社会への主体的な参画などが含まれ、単独の教科だけで指導できるものではない。この情報活用能力を指導する手段としてプログラミング教育を行う。プログラミング教育における資質・能力の3つの柱を左に載せる。

プログラミング教育では、「プログラミング的思考の育成」が重要になる。プログラミング的思考は、理科教育でも馴染みのある問題解決の過程と類似点が多い。しかし、ICTを用いた場合は、必要な要素を細かく命令(記号)に分割し、組み合わせる必要があり、人間の直感的な理解とは異なることがある。試行錯誤しながら改善を繰り返し、解決に向かうことが重要である。下に示しているプログラミング的思考のプロセスを論理的に遂行できるように指導をすることが必要であり、ICT機器やプログラミング教材について習熟することが主たる目的ではない。

プログラミング教育は、様々な形で行われることが想定されるが、理科で行う場合は、右の表のAに分類される。Aで行う場合の留意点として、「各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものにすること」として明記されている。学習評価については、「教科等の評価規準により評価するのが基本となる。すなわち、プログラミングを実施したからといって、それだけを取り立てて評価したり、評定をしたりする(成績をつける)ものではない」ということが明記されている。理科の資質・能力の育成に寄与しないようなプログラミング教育は実施してはならない。「電気の利用」単元の指導計画中に、MESHを使う必然性・妥当性をもたせる指導者の工夫が欠かせない。

 

内容2【「電気の利用」における発展的内容としてのアンプラグドなプログラミング的思考】

「電気の利用」の単元の大まかな流れは右のようになるだろう。人にとっての「利用」の面を強調し、技術によって豊かな生活ができていることや、人の願いや目的を叶える手段としてプログラミングがあることに触れ、情報社会への参画態度を高めるような工夫が考えられる。

本研修では、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)の協力を得て、アンプラグド(ICTを用いない)なプログラミング体験を行なった。JEMAには、様々な電化製品メーカーから技術者が参加している。家電製品を使って、人の様々な願いを叶えてきたのがメーカーである。今回は、「電気の利用」の内容と親和性があり、また、小学校6年生でも安全に操作ができる題材として電気炊飯器を扱った。

「始めチョロチョロ中パッパ、赤児泣いても蓋とるな」(バリエーションは他にもある)という言い伝えがあるが、米をおいしく炊くには、火加減のコントロールが必要である。水温を縦軸に、時間を横軸にして火加減をグラフ化すると左のようになる。炊飯器も電流量を制御して、おいしく炊けるように温度調節をしている。

 

「電気の利用」単元で電熱線を用いて電気エネルギーを熱に変換できることを学んだ後に、電気炊飯器を模した左の教材を操作して人力でプログラムを実行する。温度を見張るセンサー役、電流量を制御し温度を調節する役、時間を管理する役、温度変化と時間を記録する役に分かれて、協力しながら、上の「おいしいご飯を炊くグラフ」の再現を目指す。電流量の変化による電熱線の温度変化が予想外に急激であったり、余熱で意図しない温度上昇があったりするので、研修に参加した教員も苦労をしていた。

「プログラミング教育の概要」で前述したが、試行錯誤が重要であり、1度目の試行の後に、グループで話し合い2度目を行うとうまくグラフが再現できるグループも出てくる。人力でプログラムを走らせる大変さを体験することで、電気炊飯器の便利さや技術の恩恵、プログラミングの有用性の理解につながると考える。なお、上の火加減のグラフや炊飯器の内部写真。炊飯器の模擬教材のセットはJEMAに連絡することで貸し出しが可能である。

 

 

内容3【MESHを用いたセンサーライトのプログラミング】

各校に配布されたMESHは、3種類である。汎用入出力を担うGPIO(今回は回路のスイッチとして用いる)と人感センサー、明るさセンサーである。これらを回路に組み込んでセンサーからの信号を利用して、接続した機器を制御する。教科書で例示されているのは、「暗くなり、かつ人がいるときに、自動的に明かりがつく」センサーライトである。

MESHは充電して使うので、充電器とUSBケーブルのA-miniBタイプが必要となる。また、MESHとの接続には、ジャンパー線を用いる。ジャンパー線を用いた回路を試行錯誤しながら作るには、ブレッドボードが便利である。みのむしリード線、LED(抵抗入りが便利)もあると良い。現状、学校教材カタログには載っていないものもあるので、教材代理店や学校事務の会計担当者と相談して購入する必要がある。

 

学校にあるカタログに記載されている右のような教材もあるが、非常に高価であるためグループの数を用意するのは数年間の見通しをもって理科予算を計画しなければならない。また、これらは便利であるが、回路の仕組みを子どもが理解し難くなり、ブラックボックス化が進んでしまうことも考えられる。

研修では右のように回路を組んだ。電源はGPIOの出力(3.3V)を使ったが、蓄電したコンデンサや乾電池を組み込み、GPIOには回路のコントロールだけを行わせるほうが回路の意味について理解しやすいと考える。

MESHについては、専用のアプリが直感的に理解できるようになっているので、大人でも子どもでも、試行錯誤しながら動作のレシピ(プログラム)ができる。明るさセンサーを用いて、「暗くなったら、電源をONにする」という動作はどの方も簡単にたどり着くが、「明るくなったら、電源をOFFにする」という命令の必要性に多くの方が気付かなかった。試行してみて、「消すためにも、細かく命令を出さないと、プログラムはうまく動かないのか」と実感しているようだった。

また、人がいないときに動作してしまうのは目的外であり、エネルギーの無駄遣いになることから、人感センサーを使って、新たに命令を加えることが必要になり、再び試行錯誤が始まる。うまく目的通りの動作をすると大人でも歓声を上げていたのは印象的であった。同じ動作をするレシピを作っても、何通りも可能性があるため、レシピを比較して、よりシンプルなものを選ぶような学習活動も考えられる。当日は、ソニービジネスソリューション株式会社からiPadを30台とMESHを30セット貸し出していただき、研修を行うことができた。また、各グループを巡回して、MESHの操作や仕様についてサポートしていただくことができた。

 

アンケートから

 

参考文献

・文部科学省 「教育の情報化に関する手引-追補版-(令和2年6月)」 2021年

・一般社団法人日本電機工業会(JEMA)「電気の利用 授業用スライド_プログラミング学習」2018年

 

協力

・一般社団法人日本電機工業会(JEMA) JEMAの理科教育支援活動」
・MESHプロジェクト

https://meshprj.com/jp/

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